雇用保険に加入していた従業員が退職した場合には、次の仕事が見つかっていない時、雇用保険から失業保険を受給することができます。
ただし、労働者本人の都合による退職と、会社都合による退職とでは、雇用保険を受給できる期間が大幅に違ってきます。
やはり、会社都合で仕事を失った方には、手厚く失業保険を給付する制度となっているのです。
この会社都合による退職となった方は、「特定受給資格者」と呼ばれます。
今回は、どんなケースで退職した場合に「特定受給資格者」となるのかを解説していきます。
雇用保険の特定受給資格者とは?
会社都合によって退社した方を「特定受給資格者」と言います。
会社都合による解雇や、リストラで会社を辞めることになった方は「会社都合による退職」としてまとめられます。
雇用保険では、会社都合退職の方を「特定受給資格者」と呼び、自己都合で退職した方よりも失業保険の給付日数などで、大きく優遇措置をしています。
例えば、本来は失業保険を受給する場合、最初の2ヶ月間は給付制限が入ることになり、雇用保険を受給することはできません。
※過去5年間で2回以上、失業保険を受給していた場合には3ヶ月間の受給制限になります
これが、特定受給資格者については、給付制限がありません。
つまり、退職後した後、迅速に失業保険を受給できることになります。
また失業保険をもらえる日数になる「所定給付日数」が大幅に増える事もあります。
上記の通り、特定受給資格者は、自己都合で退職した方よりも優遇されていますので、あなたの退職理由が特定受給資格者の要件に当てはまっていないか確認しておくべきです。
特定受給資格者となる場合の要件
それでは特定受給資格者と認定されるケースをまとめていきます。
下記のケースで退職した場合には、特定受給資格者として失業保険の受給に関して優遇措置を受けれることになります。
①倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)により離職②大量雇用変動(1か月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため離職
※事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職③事業所の廃止による離職④事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者
※往復で4時間以上となった場合とされています
①解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)により離職②労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職③賃金(退職手当を除く)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったことにより離職④賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため離職
※当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限ります⑤離職の直前6か月間で、以下の時間数の時間外労働が行われたため離職
〇いずれか連続する3か月で45時間、
〇いずれか1か月で100時間
〇いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間または事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職
⑥事業主が法令に違反し、妊娠中若しくは出産後の労働者又は子の養育若しくは家族の介護を行う労働者を就業させ、若しくはそれらの者の雇用の継続等を図るための制度の利用を不当に制限したこと又は妊娠したこと、出産したこと若しくはそれらの制度の利用の申出をし、若しくは利用をしたこと等を理由として不利益な取扱いをしたため離職
⑦事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職
⑧期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において、当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職
⑨期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において、当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職
※上記⑧に該当する場合を除く
⑩上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職。
事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職。
事業主が職場における妊娠、出産、育児休業、介護休業等に関する言動により労働者の就業環境が害されている事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職。
⑪事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職
※従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しません
⑫事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職
⑬事業所の業務が法令に違反したため離職
特定受給資格者が失業保険をもらえる所定給付日数ついて
所定給付日数とは、失業保険を受給することができる日数のことをいいます。
会社都合で辞めた場合には、下記の表でまとめた通りの日数を上限として失業保険を受給することができます。
離職した時の年齢や、被保険者であった期間(算定基礎期間)によって、所定給付日数が決められる事になっています。
特定受給資格者の所定給付日数のまとめ
雇用保険加入期間 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 90日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
まとめ
自己都合退職の場合は、ハローワークに離職票を提出してから7日間の待機期間があり、その後2ヶ月間給付制限となります。
※過去5年間で2回以上、失業保険を受給していた場合には3ヶ月間の受給制限となります。
特定受給資格者の方については、最初の7日間の待機期間の翌日から失業保険を受給できますので、自己都合退職よりも優遇されます。
また自己都合退職の方は、過去2年の間に被保険者期間が通算して12ヶ月以上あることが条件となりますが、特定受給資格者の方は、過去1年の間に被保険者期間が通算して6ヶ月以上あれば、失業保険が受給できます。
もしあなたの離職票に自己都合による退職として記載されていた場合で、本当は会社都合であった時は、書類の訂正をハローワークへお願いして見て下さい。
メリットは大きいです。
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