労働基準法に違反した場合には、誰が処罰されるのでしょうか。
法人が処罰されるのか、社長自身なのか、あるいは違反した上司が処罰の対象となるのか。
今回は、労働基準法に違反した場合の処罰対象について、掘り下げてまとめていきます。
法違反をしても会社が処罰されるだけで、個人が逮捕されることはないとお考えの方は注意が必要です。
会社が労働基準法に違反した場合に罰則が与えられるのは、労働基準法に定められた「使用者」となります。
つまり労働基準法でいう、この使用者こそが違反行為における処罰の対象となるのです。
この使用者には、店長や課長といった従業員も含まれます。
彼らも、法違反を犯せば当然に処罰の対象となるのです。
さらに、使用者だけでなく会社そのものも罰則の対象になります。
これを「両罰規定」と言います。
今回は、労働基準法に違反した場合の処罰の対象と両罰規定について、まとめていきます。
3分解説の始まりです。
労働基準法違反で罰則が与えられる「使用者」とは?
会社が労働基準法に違反した場合に罰則が与えられる対象になるのは、労働基準法に定められた「使用者」です。
使用者とは以下のように定められています。
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
事業主は当然に使用者となります。
注目すべき点は、経営や事業について、事業主の為に行為をするすべての者も使用者となると記載されている点です。
つまり、取締役や店長などは当然に使用者となりますが、部長や課長などの各事業の実質的な権限を持つ従業員も含められることになります。
その事業の業務命令や、労働者の指揮監督を行うのは、これらの使用者となるからです。
この従業者でもある使用者についても、法違反を犯せば当然に罰則の対象になるのです。
ただし、会社の中で肩書きだけ部長や店長ということであって、実態上は名ばかりの者は、罰則の対象にはなりません。
労働基準法にある両罰規定について
労働基準法に違反した場合に「使用者」が処罰の対象になるということになります。
ただし事業主でない使用者が違反行為をした場合では、その行為はその事業主のために犯したと考えるのが自然です。
そこで労働基準法では、最終的に利益の属する事業主にも責任を負わせることとしているのです。
ちなみに、その事業主が労働者に対して違反行為の防止に努めていた時は、その違反行為に対する責任が事業主にかかることはありません。
上記の通り、労働基準法に違反した場合、「使用者」だけでなく、会社そのものも罰則の対象となります。
これを「両罰規定」と言います。
以下が両罰規定を定めた条文です。
1 この法律の違反行為をした者が、当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては、事業主に対しても各本条の罰金刑を科する。
ただし、事業主(事業主が法人である場合においてはその代表者、事業主が営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者又は成年被後見人である場合においてはその法定代理人(法定代理人が法人であるときは、その代表者)を事業主とする。次項において同じ。)が違反の防止に必要な措置をした場合においては、この限りでない
2 事業主が違反の計画を知りその防止に必要な措置を講じなかった場合、違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかった場合又は違反を教唆した場合においては、事業主も行為者として罰する。
ちなみに、会社から事務代理の委任を受けた社会保険労務士がその懈怠により申請等を行わなかった場合には、その社会保険労務士は、労働基準法第10条の「使用者」及び各法令の両罰規定にいう「代理人、使用人その他の従業者」に該当するものとされ処罰対象となります。
また事業主については、社会保険労務士に必要な情報を与えるなど、当該申請ができる環境を整備していれば、処罰が免責されるものとされていますが、それが認められない場合には、両罰規定に基づき事業主も責任を問われることになります。
まとめ
労働基準法に違反をした場合に誰が罰せられるかという点に着目して解説しました。
たとえあなたが労働者という身分でも部長というポジションの場合には、部下に違法な指示命令を下せば会社もろとも罰せられることになるのです。
最近では、電通の過労死事件が注目されています。
電通と元上司らは労働基準法違反容疑で書類送検され、地検は元上司を不起訴(起訴猶予)としました。
会社へは罰金50万円の有罪判決という処分が東京簡裁判決により確定しています。
注目すべき点は上司の罪の重さではありません。
実際に書類送検され罪が問われたという事実です。
使用者の立場の方は、労働基準法を知ることが大事です。
会社の為の行為だったと言い訳はききません。
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