労働者災害補償保険法について、いわゆる労災保険の遺族に給付されることになるケースと、その対象となる遺族の範囲について、今回はスポットを当てました。
残念ながら、業務災害により死亡してしまった労働者はいらっしゃるかと思います。
ご家族の無念もさることながら、やはり亡くなられた労働者により生計が維持されていた家庭については、今後の生活についての不安も増すことになるでしょう。
労災保険では、遺族への補償として年金や一時金などを支給する制度を設けています。
少しでも、ご遺族の生活維持への助けになるためのものです。
それでは、今回は労災保険の遺族へ給付される制度と遺族の範囲を解説していきます。
目次
遺族へ支払われる給付の種類まとめ
詳しい給付の内容などについては、別の機会に詳しくまとめていきます。
今回は、遺族へ給付される給付制度の種類とその範囲にスポットを当てていきます。
労災保険で遺族へ支給される給付の種類は以下の通りとなります。
〇障害(補償)年金差額一時金
〇遺族(補償)年金
〇遺族(補償)年金前払一時金
〇遺族(補償)一時金
〇葬祭料
以上が亡くなられた労働者のご遺族へ支給される給付となりますが、この他にも、社会復帰促進等事業などで、ご遺族への生活のサポートなども行なわれています。
障害(補償)年金差額一時金がもらえる遺族の範囲とは?
障害(補償)年金差額一時金について簡単に説明します。
労働者が業務上又は通勤途上でケガや病気となった場合には、その労働者へ障害補償年金が支給される場合があります。
この労働者が受給できる年金は、一級の障害の場合、前払いで最大1340日分をまとめて受給することが可能です。
その労働者がその後に死亡した場合には、1340日分の年金額とその労働者が受給した年金額の差額を遺族へ補償するものとなります。
早くに亡くなってしまった方とそうでない方との公平性を保つ為に、限度額1340日までは支給するということになります。
障害(補償)年金差額一時金の遺族の順位は、次の通りとなります
労働者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた方
1位 配偶者
2位 子
3位 父母
4位 孫
5位 祖父母
6位 兄弟姉妹
労働者の死亡の当時その者と生計を同じくしていなかった方
7位 配偶者
8位 子
9位 父母
10位 孫
11位 祖父母
12位 兄弟姉妹
「生計を同じくする」とは、労働者の収入によって生計の一部を維持していればよいとされています。
共稼ぎの場合でも、消費生活上の家計の一部を労働者が支えていた場合でも当てはまります。
ちなみに障害補償年金差額一時金の支給限度額は以下の通りとなります。
第1級 1340日分
第2級 1190日分
第3級 1050日分
第4級 920日分
第5級 790日分
第6級 670日分
第7級 560日分
遺族(補償)年金がもらえる遺族の範囲とは?
労働者が業務上又は通勤途上でケガや病気が原因で亡くなった場合には、その遺族へ遺族年金が支給されます。
遺族(補償)年金の遺族の順位は、次の通りとなります
1位 妻(年齢不問)又は、夫(60歳以上or 一定の障害あり)
2位 子(18才に達する日以後の最初の3月31日までの間or一定の障害あり)
3位 父母(60才以上or一定の障害あり)
4位 孫(18才に達する日以後の最初の3月31日までの間or一定の障害あり)
5位 祖父母(60歳以上or 一定の障害あり)
6位 兄弟姉妹(18才に達する日以後の最初の3月31日までの間or60歳以上or 一定の障害あり)
7位 夫(55歳以上60才未満)※60才より支給
8位 父母(5歳以上60才未満)※60才より支給
9位 祖父母(55歳以上60才未満)※60才より支給
10位 兄弟姉妹(55歳以上60才未満)※60才より支給
遺族年金の支給額は以下の通りです。
遺族の数 | 遺族(補償)年金 |
1人 | 153日分 ※妻で55歳以上or一定障害で175日分 |
2人 | 201日分 |
3人 | 223日分 |
4人 | 245日分 |
※遺族特別支給金(一時金)として遺族の人数に関わらず300万円の支給もあります。
ちなみに遺族年金は、最大で1000日分を前払いで受給する事も可能となっています。
遺族(補償)一時金がもらえる遺族の範囲とは?
遺族(補償)一時金とは、労働者の死亡当時 遺族(補償)年金の受給権のある遺族がいない時、あるいは1000日分の年金を遺族年金を受給する前にその受給権者が失権した場合に、他に年金の遺族年金の受給権がいない場合に支給されることになります。
遺族(補償)一時金の遺族の順位は、次の通りとなります
1位 配偶者
2位 子・父母・孫・祖父母(労働者の死亡当時 生計を維持されていた方)
3位 子・父母・孫・祖父母(労働者の死亡当時 生計を維持されていなかった方)
4位 兄弟姉妹
支給される額は、給付基礎日額の1,000日分となりますが、遺族年金の受給者が失権していた場合には、1000日分から、遺族年金が支給されたその差額となります。
まとめ
以上、労災保険の遺族へ支給される給付とその範囲についてまとめました。
この他にも、葬祭料や社会復帰促進等事業などもありますので別途詳しく解説していきます。
お仕事をされている方が亡くなられて場合の労災保険からの補償、あるいは厚生年金からの遺族厚生年金などもあり、少々複雑に感じるかもしれませんが、知識として知っておいた方が絶対に良いと思います。
また、残念ながらご遺族となられた方は、その道のスペシャリストである社会保険労務士へ相談することは得策かもしれません。 仕事中にケガをしたり、仕事が原因で病気になった場合の医療費や給与の補償は、労災保険がカバーしてくれることになります。 ただし、仕事の業種や規模などで労災保険が使えない場合もあるのです。 今回は、労災保 ... 続きを見る 日本の労働者の働き方が変化しつつあります。 一つの会社だけで働くのではなく、複数の会社で働くという労働がトレンドになりつつあります。今後もこの働き方は増加傾向になることが予想されます。 2020年の労 ... 続きを見る
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