仕事中にケガをしたり、仕事が原因で病気になった場合の医療費や給与の補償は、労災保険がカバーしてくれることになります。
ただし、仕事の業種や規模などで労災保険が使えない場合もあるのです。
今回は、労災保険の適用される事業と適用除外される事業をまとめていきます。
それでは、解説を開始します。
目次
労災保険の適用される事業・適用除外の事業のまとめ
適用事業とは、労災保険が当然に適用される事業です。
アルバイト、パートタイマー、日雇労働者、外国人労働者、外国人の不法就労であっても、適用事業所に使用され賃金を支払われている場合は労災保険が適用されます。
ちなみに派遣労働者については派遣元事業主の事業が適用事業とされますので、派遣元での労災保険が適用されます。
それでは適用事業について、掘り下げて説明していきます。
法律上当然に適用される「強制適用事業」と、手続きをすることで適用事業となる「暫定任意適用事業」があります。
強制適用事業とは、労災保険の加入が義務となる事業で、事業開始、又は強制適用事業に該当した日から保険関係が成立します。
労働者を1人でも使用する事業はすべて強制適用事業となります。
労災保険の任意適用の手続きをしなければ労災保険が使えない業種とは?
ある一定の業種については、労災保険の加入認可を受けていないときは、その事業場で働く労働者は労災保険による補償が受けらません。
そのため、労災保険の任意適用の手続きをする必要があります。
これを暫定任意適用事業といいます。
逆に言うと、労災保険に加入しなくてもよいということになります。
具体的には、以下の農林水産業の一部が任意適用事業となります。
農業
畜産業 養蚕業 |
個人経営 | ・常時5人未満の労働者を使用
※危険又は有害な作業(※1)を行う事業で、常時労働者を使用してない ※事業主が特別加入していない |
林業 | 個人経営 | 労働者を常時使用しておらず、年間使用労働者延人数300人未満 |
水産業 | 個人経営 | 常時5人未満の労働者、かつ危険又は有害な作業(※1)を行う事業でなく次のいずれかに該当
A 5トン未満の漁船により操業 B 5トン以上の漁船であっても、河川、湖沼又は特定水面(※2)において主に操業 |
※1 危険又は有害な作業とは?
・毒劇薬、毒劇物又はこれらに準ずる毒劇性料品の取扱い
・危険又は有害なガスの取扱い
・重量物の取扱い等の重激な作業
・病原体によつて汚染されるおそれが著しい作業
・機械の使用によつて、身体に著しい振動を与える作業
・危険又は有害なガス、蒸気又は粉じんの発散を伴う作業
・獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における作業
・強烈な騒音を発する場所における作業
・著しく暑熱な場所における作業
・著しく寒冷な場所における作業
・異常気圧下における作業
※2 特定水面とは?
陸奥湾、富山湾、若狭湾、東京湾、伊勢湾、大阪湾、有明海及び八代海、大村湾、鹿児島湾が特定水面に指定されています。
暫定任意適用事業は労働者の過半数が希望するときは加入しなければならない
暫定任意適用事業の事業主は、その事業で働いている労働者の過半数が、労災保険の加入を希望したときは、加入の申請をしなければならないと、法律で定めらています。
ちなみに「事業」とは企業を指すものではなく、工場、鉱山、事務所のように経営組織として独立性を持った最小単位の経営体をいい、一定の場所において一定の組織のもとに相関連して行われる作業の一体は、原則として一の事業として取り扱うとされています。
またこの事業とは、労働者を使用して行われる活動をいい利潤を目的とする経済活動だけではなく、社会奉仕、宗教伝道等のように利潤を目的としない活動も含まれるという通達もでています。
労災保険が例外なく使えない適用除外される職業もあります
次の事業及び労働者については、労働者災害補償保険法は適用されません。
つまり労災保険は使えないという事になります。
・国の直営事業
国の直営事業(国営企業)である国有林野事業に使用される者
※国家公務員災害補償法が適用されます
「行政執行法人の職員」である独立行政法人国立印刷局、独立行政法人造幣局等については、労働基準法については適用されますが、労働者災害補償保険法は適用されませんので注意が必要です。
※国家公務員災害補償法の適用されます
・地方公務員
地方公務員については、「常勤」か「非常勤」かで、労災保険が適用されるかが決まります。
「地方公務員の常勤職員」は地方公務員災害補償法が適用されますので、労災保険の適用は除外されます。
「地方公務員の現業の非常勤職員」は、労災保険法が適用されます。
※市町村の組合の職員については、すべて労働者災害補償保険法が適用されるという通達がでています。
・官公署の事業
地方公共団体の現業部門の非常勤職員以外の公務員は全て適用除外となります。
・船員保険の被保険者
船員保険の被保険者は船員保険法が適用されるので、労災保険は適用除外となります。
ただし、以下に該当する場合は、、労災保険が適用されることとなっています。
A 総トン数5トン未満の船舶
B 政令で定める総トン数30トン未満の漁船
C 湖、川又は港のみを航行する船舶(総トン数を問わない)
労災保険の特別加入をすることで労災保険の適用が受けられる人について
・自営業者、中小事業主、家族の労働者について
自営業者、中小事業主、家族の労働者については、労働者と言えませんので、労災保険が使用できません。
ただし、特別加入の申請をすることで労災保険の適用を受けることができます。
・国外の事業の場合
国外で行われる事業には労働者災害補償保険法が適用されませんので、、日本から海外に派遣された労働者は、労災保険が使えない事になります。
ただし、特別加入の申請をすることで労災保険の適用を受けることができます。
なお、国外現地で採用された労働者については、特別加入の申請も行えません。
※国内の事業所の指揮命令に従って業務に従事している海外出張者は労災保険が使用できるという通達がでています。
まとめ
今回は労働者災害補償保険法の適用される業種について、まとめました。
あなたの業種が実は、労災保険の対象外だとしたら、万が一の事故や病気の時は、大変なことになります。
仕事によるケガや病気では、健康保険証が使えない場合がありますので、注意が必要ですね。
その場合は、労災保険の特別加入の申請をして、万が一に備えておきましょう。
以上、心も身体も大切にして、日々の業務を頑張りましょう! 雇用されている労働者は仕事による怪我や病気で病院に通った場合、健康保険は使えません。労災保険が適用されるからです。 ここで問題となるのが事業主や法人役員です。 兼務役員など例外を除いて、この方たちは、 ... 続きを見る 日本の労働者の働き方が変化しつつあります。 一つの会社だけで働くのではなく、複数の会社で働くという労働がトレンドになりつつあります。今後もこの働き方は増加傾向になることが予想されます。 2020年の労 ... 続きを見る
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