厚生労働省の発表によると、2020年8月時点において全国で201名の内定が取り消され、1291名の入社時期の繰り下げがありました。
新型コロナウイルス感染症の猛威が勢いを増して拡大していく中で、今後も、内定の取り消しが増えていくと思われます。
さらには解雇の件数も増えていくことも重なり、経済に与えるダメージは計り知れません。
今回は、内定の取り消しについて解説していきます。
1分解説です。
内定とは?その始期付解約権留保付労働契約について
就職の内定については、法律によってルールが定めらているというわけではありませんが、過去の内定取り消しをめぐる裁判による判例によると、内定は「始期付解約権留保付労働契約」とされています。
つまり、始期として実際に入社し就労する日が定められていて、内定から就労開始するまでの期間に、企業は一定の要件でそれを解約できる権利をもっているということになります。
「始期付解約権留保付労働契約」とみなされることによって、入社までにやむをえない事由が発生した場合には内定を取り消すことが可能となることから、いわば条件付きの労働契約と言えます。
注意が必要な点として、内定が決まった時点で解約権留保付ではありますが、労働契約が成立しているという事です。
これは、内定の取り消しが解雇と同様の法律的扱いとされることを意味します。
いずれにしても、内定取り消しについては、「客観的に合理的で社会通念上相当」であるかが重要となります。
内定の取り消しが認められるケース
内定取り消しが認められるケースを例として記載します
〇学生が留年などにより卒業できなかったとき
卒業ができない場合、内定の取り消しとなります。
例外として、卒業することを前提としない条件での内定は取消しはできません。
〇重要な部分で経歴詐称があったとき
重要な部分の経歴詐称とは、採用決定の合否に大きく左右する部分を言います。
保有資格の詐称や職歴などとなりますが、それだけで内定取り消しが可能となるわけではなく、その内容の程度により判断されることになります。
解雇やうつ病を患った経験などを履歴書に書かなかったことでは経歴詐称とは言えませんので注意が必要です。
〇健康状態により業務を行うことができないとき
内定決定した当時よりも健康状態が悪化し、業務をこなすことができない場合、内定の取り消しが可能となる場合があります。
ただし、会社の判断だけでは不十分であり、医師などの見解も含めて判断することが重要です。
〇経営状態の悪化によるとき
経営状態の悪化により内定を取り消しする場合、整理解雇の規定に準じてを判断されます。
整理解雇については、こちらの記事にて詳しく解説しています。
【解雇を受けた場合】解雇通告・解雇予告を言われた時の対応について徹底解説!
まとめ
以上、今回は内定の取り消しについてご説明させて頂きました。
コロナの影響や社会情勢に影響され、内定取り消しという決断を迫られている会社も多いかと思います。
内定取り消しは学生にとっても、将来を左右する問題でもあり、できるだけそれ以外も方法で解決に導きたいところではないでしょうか。
できるだけ会社と労働者がトラブルにならずに進んでいくためにも、労働問題に関する専門家である社会保険労務士に相談することは非常に有効な手法となります。