労災保険の適用される事業所に使用され賃金を支払われている労働者は、業務中によるケガや病気、または通勤災害によって被災した場合には、労災保険給付を受けることになります。
仕事による事故等で死亡してしまった場合には、遺族への補償給付が支給されます。
注目すべき点は、この保険の対象が「賃金を支払われている労働者」という点です。
つまり、会社の社長や経営者は労災保険が適用されないのです。
かと言って健康保険が使えるかというと、それも使えません。
社長の仕事によるケガや病気は健康保険証の対象にもならないのです。
※一部、緩和要件あり。
その為、社長や経営者が労働者と同様の業務を行う場合には、別途「特別加入」の申請をすることによって、労災保険の適用を受けれることが可能となります。
これを労災保険の特別加入と言います。
では、1分徹底解説を始めます。
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【5人未満の被保険者の会社】社長は業務中の怪我や病気で健康保険は使える?使えない?
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目次
労災保険の特別加入制度を利用できる方のまとめ
労災保険の特別加入は、経営者なら誰でも加入申請が出来るわけではありません。
加入が可能であるパターンとして、次のように大きく三種類に分けられています。
〇第1種特別加入者 (中小事業主・業務執行権を有する役員・家族従事者)
〇第2種特別加入者 (一人親方・自営業者及びその事業に従事する者、特定作業従事者)
〇第3種特別加入者 (海外派遣者)
中小事業主・役員・家族従事者の特別加入(第1種特別加入者)について
第1種特別加入者として特別加入できる人は、事業主・家族労働者・業務執行権を有する役員となります。
もし、事業主が加入する際には、その役員や家族従事者も全員加入することが通例です。
労災保険に特別加入できる中小事業主等はその事業の労働者の人数要件をクリアし、労働保険事務組合に労働保険の事務を委託している事業所に限られます。
人数要件については、以下の通りとなっています。
〇金融業、保険業、不動産業、小売業
・常時50人以下の労働者を使用
〇卸売業、サービス業
・常時100人以下の労働者を使用
〇上記以外の事業
・常時300人以下の労働者を使用
一人親方・自営業者・特定作業従事者の特別加入(第2種特別加入者)について
第2種特別加入者として特別加入できる人は、一人親方等および特定作業従事者となります。
一人親方等については、労働者を使用せずに以下の業種の事業を行う一人親方、その他の自営業者とその従事者となります。
〇個人タクシー・個人貨物の運送の事業
〇大工・左官・とび職人
〇漁船による水産動植物の採捕の事業
〇林業
〇医薬品配置販売業
〇再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体
〇船員法1条に規定する船員が行う事業
労働者を使用している場合には、一人親方として特別加入はできませんが、臨時の使用であって、1年に100日未満なら加入が可能です。
また、特別加入団体を通じて加入することが要件となります。
もう一方、第2種特別加入者として加入できる特定作業従事者については、以下の業種となります。
〇特定農作業従事者
・総販売額が300万円以上または経営耕地面積が2ヘクタール以上の農家
〇特定農業機械作業従事者
・トラクターや溝掘機、自走式田植え機、コンバイン、チェーンソーなどを使用する農作業従事者
〇職場適応訓練従事者・事業主団体等委託訓練従事者
・国又は地方公共団体が実施する職場適応訓練、事業主団体等委託訓練を行っている方
〇家内労働者及びその補助者
・金属、皮、ゴム、布の加工を行っている方など
〇労働組合等常勤役員
・労働組合等の事務所などで集会の運営・団体交渉などを行っている方
〇介護作業従事者
・介護、機能訓練または看護を行っている方
特別加入団体を通じて加入することが要件となります。
また特定作業に従事している方は、業務歴の報告や健康診断の実施が要件となります。
海外派遣者の特別加入(第3種特別加入者)について
会社から海外への転勤を言い渡された場合は、労災保険が適用されなくなる場合があります。
海外での業務については、原則的には労働者災害補償保険法の適用外となっているからです。
ただし、その場合でも特別加入の申請をした場合には、労災保険の適用を受けれる事となります。
具体的には以下のケースとなります
〇日本国内の事業主から、海外の事業に労働者として派遣される方
〇日本国内の事業主から、海外の中小規模の事業に事業主等として派遣される方
〇国際協力機構などから派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する方
派遣を支持した国内の事業主について労災保険の成立していることが要件となります。
この場合には事業主が、労働基準監督署長へ申請の手続きを実施することになります。
特別加入者の給付基礎日額の希望額を決めましょう
特別加入を申請するの給付基礎日額は、3,500円から25,000円の範囲で希望する金額を自由に選ぶことができます。
その希望額に基づいて、都道府県労働局長が決定します。
給付基礎日額を高く設定すると保険給付の額も高くなりますが、納める労災保険料も高くなりますので、あなたの収入に見合った金額を設定しましょう。
また家内労働者等についての給付基礎日額は、2,000円から25,000円の範囲となります。
保険給付の支給制限が行なわれるケース
ある一定のケースに該当した場合には、政府は特別加入の保険給付の全部または一部(支給制限)を行わないことがあります。
一定のケースとは以下の通りとなります。
・労働災害が特別加入者の故意または重大な過失によって発生した場合
・労働災害が保険料の滞納されている期間中に生じた場合
まとめ
5人以上の労働者がいる会社の社長は、仕事中に怪我をしても労災保険が適用されないどころか、健康保険証も使えません。
全額自己負担で医療費を支払うことになるという目も当てられない状況になってしまう前に、今回、解説した特別加入制度を利用して、万全の体制で仕事に励むことが何より安心です。
いつ何時、労働災害が起きるか誰にも分かりません。
不足の事態に対する備え、あなたは大丈夫ですか!
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