会社都合で退職する従業員が出た場合、助成金を受給できない、あるいは助成金を返還しなければならないことがあります。
つまり会社都合による解雇は助成金不支給の要件になる場合があるのです。
それでは会社都合の解雇について詳しく見ていきましょう。
1.雇用関係の助成金の支給要件
労働者の雇用に関わる助成金の多くは、「該当する従業員を雇い入れる日の前日から起算して6ヶ月前の日から1年を経過する日までの間に、事業主都合の解雇をしていない」という旨の要件があります。
以下に代表例の助成金とその要件のうち解雇に関する記載があるものを記載します。
~就職が困難な者や障害者等の試行雇用した場合の助成金~
「基準期間(トライアル雇⽤を開始した⽇の前⽇から起算して6か⽉前の⽇からトライアル雇⽤期間を終了する⽇までの期間をいう。)に、トライアル雇用に係る事業所において、雇⽤保険被保険者を事業主都合で離職させたことがある事業主以外の事業主」
~高年齢者や障害者、被災者等の雇用をした場合の助成金~
「対象労働者の雇入れ日の前後6か月間(以下「基準期間」という)に事業主の都合による従業員の解雇(勧奨退職を含む)をしていないこと」
~社員を正社員転換した場合の助成金~
「当該転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該転換を行った適用事業所において、雇用保険被保険者※6を解雇※7等事業主の都合により離職させた事業主以外の者であること。」
~社員に教育訓練をした場合の助成金です~
職業訓練計画を提出した日の前日から起算して6か月前の日から、その職業訓練でのキャリアアップ助成金の支給申請書の提出日までの間に、職業訓練計画を実施した事業所で、雇用保険被保険者を解雇等事業主の都合により離職させた適用事業主」
2.事業主都合の退職を掘り下げて見てましょう
〇会社都合の解雇
会社都合退職は、退職の主な原因が事業主側にある退職の事です。
会社側から労働契約の解除を通知した場合などです。
主に「倒産」「解雇」「退職勧奨」があります。
法的倒産及びそれ以外の事業廃止、事業の再開見込みなし、リストラ等による解雇などが、会社都合解雇の一般的なものです。
問題を起こした労働者に対して「懲戒解雇」を命じた場合は会社都合退職に含まれず、自己都合退職扱いとなる場合もあります。
「希望退職制度」の規程に準じて退職した社員は会社都合退職に含まれますが、「早期退職優遇制度」に準じた退職は自己都合退職となります。
〇退職勧奨
退職勧奨は、「自己都合」になる場合と「会社都合」になる場合があります。
事業主が退職勧奨した後、従業員から退職を申し出た場合は、「自己都合退職」となりますので、会社都合にはなりません。
逆に事業主から退職を伝えた場合や、退職勧奨後に従業員が退職拒否の意思を表明し、事業主が解雇した場合は「会社都合」の退職となります。
受給した助成金は返還するケース
支給された後に解雇が発覚した場合は、支給された助成金を返還しなければならない場合があります。
また、助成金目的で、ハローワークに提出する雇用保険資格喪失届の退職理由を「自己都合」に偽る行為は不正受給となり、その後3年間は助成金の申請が出来なくなってしまうケースもあります。
まとめ
厚生労働省の勧奨する助成金は、労働者の雇用安定を目的としていますので、事業主都合の解雇を行った解雇には、厳しい判断が行なわれます。
助成金を受給しようとしている会社は、問題のある社員を解雇しづらくなるというデメリットもあります。
いずれにしても、助成金をお考えの会社は、解雇については慎重な判断が必要となります。
それぞれ会社の経営方針に沿って、要件が合えば助成金申請を行うという柔軟な対応をおすすめします。 助成金を広告にする事はあまりありませんので、キャリアアップ助成金を知らない経営者も多いかと思います。 助成金の要件にあった雇用をしていたのに、せっかくもらえた助成金を逃す事になってしまいます。 会社や ... 続きを見る
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